周易の技法⑤ 綜卦”反対側からの視点”
易の卦というものの見方には何か束縛するようなルールは存在しません。
自分(相談者)から見た易の卦は初爻から上爻に向かって発展していきますが、一方でその先には相手(易神)が座ってその卦を反対から眺めている…そんな視点も存在します。
これが今回解説する「綜卦(そうか)」と呼ばれるものです。
綜卦”反対側からの視点”
綜卦とは得卦を180度反対から眺めた視点のことを言います。

内卦外卦を入れ替えるのではなく、上下をそのまま180度逆さにして卦を見るのです。
風地観初爻から見るのではなく、その反対側から、つまり上爻から初爻に向かって風地観の卦を眺める感じです。
もちろんその卦象は風地観とは異なります。上爻から風地観を眺めると「地沢臨」という卦象になります。
この綜卦というものをどのように捉えるのか?一つには自分が居れば相手がいると考えます。
例に挙げている「転職を検討している相談者」であれば、相談者自身に対して、そこには必ず同僚や上司がいるはずです。
それでは地沢臨にはどのような辞がかけられているでしょう。
臨は、元いに亨る貞に利ろし。八月に至りて凶あらん
(”臨”の時は大いに通達する。ただし季節が八月の秋に至るころにはその勢いが衰えることを知るべきである)
地沢臨は季節に例えると4月後半から5月。木々の芽が一斉に膨らみ新緑に山々の木々が染まるころです。この時は植物の生長が著しく、ぐんぐん枝葉を伸ばします。
一方で季節は必ず巡りますから、8月旧盆を過ぎるころからその成長の勢いも衰えます。つまりここから勢いに身を任せず、どこか落としどころを見据えての行動や計画を促します。
もしこれを上司の心境として考えればどうか?
相談者は仕事に対して未来を感じられず、転職を検討しています。一方で上司の目線からは、まだまだ相談者に伸びしろがあると期待している感じです。

ただし八月には凶に至らん…とありますから、上司の恩情や期待感も未来永劫続くのではなく、ある程度のところで見切りを付けられてしまいそうです。
もちろん、綜卦においても先の互卦、互体を持ってみることができます。

互卦を取るならば、2爻の陽爻(—)、3爻の陰爻(- -)、4爻の陰爻(- -)を内卦とする震、3爻の陰爻(- -)、4爻の陰爻(- -)、5爻の陰爻(- -)を外卦とする坤で「地雷復」という卦象となります。
上司の目線から見た相談者はまだまだヒヨッコ。基礎がまだできていないと見られているのかもしれません。
あるいは互体を取ると、内卦の兌に2爻、3爻、4爻の震で「雷沢帰妹」の互卦が取れます。

雷沢帰妹は上卦の震(青年)の後ろから兌(少女)がつき従っている卦象から、”誘惑”と解釈します。少女の目には大人びた男性はあこがれの対象となりますから、つい色目を向けられればその気になってしますう…つまり上司目線から、相談者が転職を検討している、今の仕事が面白く感じていない…ということはお見通しなのです。
その上で3爻から5爻までの坤と外卦の坤で坤為地ですから、上司としても余りうるさく言わず相談者自身の変化を期待する…そんな心の変遷を読み解きます。
一方でここで錯卦の概念を用いることも房主はします。
例えばここで外卦の坤の陰陽を反転させると乾となり、ここで2爻から4爻までの震で卦象を組み立てると天雷无妄となります。

无妄。元いに亨る。貞に利ろし。其の正に匪ざれば眚いあり。往く攸あるに利ろしからず
(”无妄”の時は大いに通達する。正しくありなさい。正しくなければ災いを受ける。進んで行動してはならない時である)
と卦辞には有りますから、上司としてはこれ以上相談ン社にプレッシャーをかけてはいけないかな…?と手綱を緩めることを検討しているかもしれませんし、一方で天雷无妄は嵐の卦象ですから、上司の心情ではなく、これを職場、仕事と見るならば、よりハード、より多忙の状態になってくる…と考えることもできます。
悩みごとの多くは、相談者自身にとどまらず、人間関係においては相手の気持ちがわからないから…と躓くことが多いです。
「風地観」という卦、単体でその悩みごとの解を求めても甚だ無味乾燥な解しか得られませんが、一方でこの様に易の卦を回転させたり、反転させることで自身の心理だけではなく相手の心理も深く洞察できるのです。




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