易経「繋辞上伝」を読み解く2

易経繋辞伝
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易経「繋辞上伝」を読み解く2

之を鼓(こ)するに雷(らい)霆(てい)を以てし、これを潤(うるお)すに風雨を以てし、日月運行して、一(ひと)たびは寒く、一(ひと)たびは暑し。乾道は男を成し、坤道は女を成す。
乾は大始を知(つかさ)どり、坤は成物を作(な)す。乾は易(い)をもって知(つかさ)どり、坤は簡をもって能(よ)くす。
易なれば知り易く、簡なれば従い易し。知り易ければ親しみあり、従い易ければ功あり。親しみあれば久しかるべく、功あれば大なるべし。久しかるべきは賢人の徳、大なるべきは賢人の業(ぎよう)なり。
易(い)簡(かん)にして天下の理得たり。天下の理得て位(くらい)をその中(ちゆう)に成(な)す。(繋辞上伝第1章第2節)

第1節ではこの地球という世界の生成の過程がつづられます。わずか60字足らずの節の中に、語りつくせない膨大なエネルギーをもとに、世界は天地間、横へ横へと広がってゆきます。

「 之を鼓(こ)するに雷(らい)霆(てい)を以てし、これを潤(うるお)すに風雨を以てし、」

…乾の陽氣を受けた坤は大地より雷「震」を起こします。これを受けて乾は風「巽」を起こし雲を呼び雨を降らします。

「 日月運行して、一(ひと)たびは寒く、一(ひと)たびは暑し。 」

…日月とはこの場合時の流れを指すとともに、日は昼、月は夜、またそれとともに寒暑の現象がこの世界に生じます。これを八卦の「日=火(離)」と「月=水(坎)」で表現します

原初の地球は、天空に雷が轟き、天より大雨が降り注ぐ一方、地よりマグマが涌出して山は噴火を繰り返した荒々しい世界でした。

しかしやがてそれが落ち着いてくると、山には木々が成長しはじめ、降り注いだ雨は海へと至る河を形成します。

「 乾道は男を成し、坤道は女を成す。 」

…ここに至って地球は万物と生命に満ちた豊かな自然へと進化を遂げます。しかし万物の生成、生命の誕生には「乾=陽」の氣を「坤=陰」が受けて初めて生じるという原理原則は一環としており、これを易では「道」と表現します

先天八卦図を見れば、乾の陽氣を陰が受け雷が生じ(①),雷の陽氣を受けて風雲生じ地表に雨を降らせる(②)。昼夜、寒暑の現象を経て気象が生まれ(③)、安定するとともに山河に万物、静物満ち溢れる(④)地球創生の物語。

「 乾は大始を知(つかさ)どり、坤は成物を作(な)す。乾は易(い)をもって知(つかさ)どり、坤は簡をもって能(よ)くす。 」

…しかしその大本は乾より生じた陽氣で、陽はもっぱらエネルギーを発し、陰がそれを受けるというエネルギーの流れ「+」と「ー」の関係と、あらゆるものはこのエネルギーの流れに従って生成されていきます。その構造は極めて単純かつ明快です。

単純かつ明快であるからこそ、そこに永続性があり、利便性があり、他に特別な力を要しない、しかし一方でそこには無限の可能性と膨大なエネルギーを秘めています。

これは陰と陽の捻じれ、すなわち「螺旋」です。捻じれることで「作用」が生まれ、その捻じれを解消しよう、元に戻そうという膨大なエネルギー「反作用」が生じます。ここに乾道、坤道のそれぞれの「道」が生じます。

これを老子はこのように表現します。

「反者道之動。」(老子道徳経 第41章)
ただひたすら前に進むのではなく、時には根源に戻るのが「道」の作用である。

あらゆるものはこの陰陽の「螺旋構造」で表現することができ、その代表的な物がDNAです。

Vector DNA icon

「 易なれば知り易く、簡なれば従い易し。知り易ければ親しみあり、従い易ければ功あり。親しみあれば久しかるべく、功あれば大なるべし。久しかるべきは賢人の徳、大なるべきは賢人の業(ぎよう)なり。 」

…陰陽の交わりなければあらゆるものは生じないし、続きません。交わるから繋がりが強固となり、この交わりを孔子は「親しみ」、それがもとで万物が生じることを「功」と表現しますが、もとより語りつくせない。

陰陽の交わりは単純かつ明確であるが、底知れない奥行きを孔子自身も感じたのでしょう。ここで言葉を尽くそうとすれば、とても一巻の書物では収まり切りません。従って孔子はこの業を「賢人の業」と定義してまとめます

しかしここで疑問が残ります。「聖人=賢人」ではないからです。

そこでこう考えます。聖人=ここでは易を伝えたとされる伏羲は、すでに易の理法(陰陽の交わり)を体得し、それを活かし得た存在です。一方で君子が大人、そして聖人に至る為にはこの易の理法を理解し、体得しなければならない。

そのためにも易の原理を知り、作用を知り、森羅万象を八卦、64卦象をもって読み解いていく。これが「賢」であり、それを行うことが「乾(天)道」「坤(地)道」に相並ぶ「人道」として定義したのでしょう。

「 易(い)簡(かん)にして天下の理得たり。天下の理得て位(くらい)をその中(ちゆう)に成(な)す。 」

ゆえにこの章、…易の理法を体得できれば、その人はすでに聖人であるとしめくくります。

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