「天玄賦総論提綱通解」現代語訳③

「天玄賦総論提綱通解」現代語訳
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「天玄賦総論堤綱通解」現代語訳
「黄金策総断千金賦通解」に引き続き、「天玄賦総論提綱通解」を現代語訳します。
「天玄賦総論提綱通解」現代語訳②
「天玄賦総論提綱通解」現代語訳。今回は官鬼の用法についてです。
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五類「兄弟」の用法の解説です。

  1. 「天玄賦総論提綱通解」現代語訳③
      1. 「兄弟とは者と比和する者を兄弟と為すなり。大抵福を為す能はず、亦た大凶も為す能はず。破財剋禄阻害の神に非ざる無し。官鬼の発動に逢ふを怕る。発動せば則ち制を受く。父母の興隆に逢ふを喜ぶ。則ち依る有り。発動すれば則ち妻財を傷剋し、福徳を扶持す」
      2. 「身命を占ふ。内象に在りては兄弟と為す。外象に在りては朋友と為す。世と相生相合すれば則ち内、兄弟と和し、外、朋友に信あり。世と相剋相冲すれば必ず破耗多端。妻妾を為し難し。」
      3. 「婚姻を占ふ。財を費やすと為る。詭敫譎と為す。虚妄と為す。若し爻象成る可きは発動すれば財を破るに過ぎざるのみ。世に臨み発動する如きは成るべからざる。必ず他日妻を傷つくを主とす。若し間爻に当たり動かば、必ず是れ媒人の詭詐虚妄」
      4. 「生産を占ふ。産母を傷つくと為す。更に凶煞を加へ発動せば妻の命必ず危うし。無氣なれば稍安を得ん」
      5. 「士官を占ふ。阻神と為す。費財と為す。嫉妬と為す。旺相して発動せば阻有り、且つ広く銭財を費やす事を心すべし。若し劫殺玄武を加ふれば、須く小人の嫉妬を防ぐべし」
      6. 「訴訟を占ふ。耗神と為す。衆に干ると為す。虚誉と為す。発動して世を剋せば我必ず財を廃す。応を剋すれば彼必ず破耗す。旺して朱雀が臨まば事必ず衆に干る。若し玄武劫殺を加ふれば事体実ならず。恐らくは詳を為すの虚偽に係らん」
      7. 「失脱を占ふ。散銭と為す。若し発動に逢はば財物已に変転を経ち、四散し以て追尋し難し」
      8. 「求財を占ふ。悪客と為す。世に在りて発動せば財必ず求め難し。傍爻発動せば人と同じく求むるは則ち可なり。然らざれば善美の利無し」
      9. 「出行及び行人を占ふ。皆伴侶と為す。旺相せば則ち侶多し。休囚せば侶少なし。発動は宜しからず。動けば則ち盤纏を増費す」
      10. 「家宅を占ふ。破産の神と為す。旺相権に当たりて発動すれば必ず多耗多端、収拾し難し。然らざれば勤労辛苦するも財利軽微なり」
      11. 「国家を占ふ。若し世上に在りて動かば、須く聚斂の臣国事を翻すを防ぐべし」
      12. 「征戦を占ふ。伏兵と為す。安静にして冲に逢はば、名を暗動と為す。其の計必ず中す」
      13. 「疾病を占ふ。兄弟朋友の用爻と為す。妻妾を占ふ剋殺と為す。旺相発動せば、妻必ず傷有り」

「天玄賦総論提綱通解」現代語訳③

「兄弟とは者と比和する者を兄弟と為すなり。大抵福を為す能はず、亦た大凶も為す能はず。破財剋禄阻害の神に非ざる無し。官鬼の発動に逢ふを怕る。発動せば則ち制を受く。父母の興隆に逢ふを喜ぶ。則ち依る有り。発動すれば則ち妻財を傷剋し、福徳を扶持す」

卦が帯びる五行と比和する者を「兄弟」という。

兄弟は本来財を破り、事の成就を妨げ、事物を阻害する星で、発動すれば子孫の喜神を生じるも、兄弟自体は福を生じることはなく、官鬼のような凶事災いを興すようなことはないが、財を破り、門は傾き、事を他者と争い、不和をきたすなど、皆この星特有の象意である。

官鬼は兄弟の忌神となるのでその発動を嫌い、原神となる父母の発動を喜ぶ。また兄弟爻の発動は妻財を剋傷し一方で子孫を生じる。

「身命を占ふ。内象に在りては兄弟と為す。外象に在りては朋友と為す。世と相生相合すれば則ち内、兄弟と和し、外、朋友に信あり。世と相剋相冲すれば必ず破耗多端。妻妾を為し難し。」

身命の占いに在っては、もし内卦の兄弟であれば肉親の兄弟姉妹のことであり、外卦の兄弟は朋友の事である。

世爻と相合、相生の関係は内卦の兄弟であれば兄弟仲は睦まじく、外卦の兄弟は朋友には信義がある。一方で世爻と相克したり相冲の場合は、必ず財をめぐっての対立が生じるのである。あるいは妻や異性をめぐっての争いがある。

※(注)身命占ではなく、婚姻や恋愛を占って「兄弟」が発動する場合は、異性に別に交際中の人がいたり、あるいは三角関係を意味します

「婚姻を占ふ。財を費やすと為る。詭敫譎と為す。虚妄と為す。若し爻象成る可きは発動すれば財を破るに過ぎざるのみ。世に臨み発動する如きは成るべからざる。必ず他日妻を傷つくを主とす。若し間爻に当たり動かば、必ず是れ媒人の詭詐虚妄」

婚姻の占に在っては、兄弟爻の発動は挙式にあたって諸々の出費が多い。

また嫁婿ともに双方誠意を欠き、その経歴や性情を語るにあたっては嘘偽りが多い。また婚姻を占って概ね吉占である場合、兄弟爻の発動は、出費損耗、破財を意味するところであるが、もし凶占であるならば兄弟の発動は諸々障害多く、また兄弟が世爻に臨むようであれば後日必ず妻を傷つけたり、妻が大病を患ったりするような凶事が発生し、円満な家庭は望めないのである。

間爻の兄弟は縁断の媒酌人であり、発動するような時はその人詭弁、偽りが多く信用が置けない人である。

「生産を占ふ。産母を傷つくと為す。更に凶煞を加へ発動せば妻の命必ず危うし。無氣なれば稍安を得ん」

出産の占いに在っては、この兄弟の発動は妻財の忌神となるため、母体が傷つくを畏れる。

特に凶煞が重なるときは難産であり、時には死に至ることもある。ただし静爻で休囚であれば難産も生命にかかわるような危機はないであろう。(この節は夫が出産を占った場合であり、出産する妊婦が自ら占ったり、親が娘の出産を占うような場合は用神の用法が異なるので注意)

※(注)九鬼訳「この節は夫が出産を占った場合」と注釈を施したのは、本節が兄弟が忌神となる場合に限った場合であり、妊婦が自身の出産の安否を占う時は、妊婦自身の爻は世爻となります。親が娘の出産の安否を占う時は応爻が妊婦となります

「士官を占ふ。阻神と為す。費財と為す。嫉妬と為す。旺相して発動せば阻有り、且つ広く銭財を費やす事を心すべし。若し劫殺玄武を加ふれば、須く小人の嫉妬を防ぐべし」

士官や就職を占うにあたっては、兄弟は妨げ、支障事の星や競争相手と見る。

占って兄弟発動すれば出費が多く、玄武や劫殺の凶煞が重なるような時は、他者の嫉妬による妨害が多いとみる。旺相して発動するような時は、競争相手の強力な横やりや介入があったり、思わぬ出費を余儀なくされ、しかも目的が達せられないであろう。

「訴訟を占ふ。耗神と為す。衆に干ると為す。虚誉と為す。発動して世を剋せば我必ず財を廃す。応を剋すれば彼必ず破耗す。旺して朱雀が臨まば事必ず衆に干る。若し玄武劫殺を加ふれば事体実ならず。恐らくは詳を為すの虚偽に係らん」

訴訟を占うにあっては、その訴訟大いに費用を費やすと判断し、また訴訟の内容は一対一ではなく、複数の人がかかわっていることを示し、互いに面子にこだわっている様相である。

もし発動して世爻や用神を剋すような時は、賠償や和解にあたってはその金額は多額となる。応爻を剋する場合は相手方が多額の賠償金や和解金を費やすという象である。

兄弟爻旺相して朱雀を帯びるような時は、必ずその訴訟に多人数がかかわってきて、訴訟事は揉めるであろう。玄武や劫殺を伴う時は詐称、虚言が多く、また事実に似せた詳細な虚構話、偽証が出てくることを警戒する。

「失脱を占ふ。散銭と為す。若し発動に逢はば財物已に変転を経ち、四散し以て追尋し難し」

遺失物、探し物を占うにあっては、兄弟爻はその捜索に当たって必要とする費用を表す。もし発動する場合は、探し物はすでに落とした場所、しまったと思われる場所から動いており、なかなか見つからない。(妻財を用神としない場合においてはこの判断をしない)

※失脱占、失せ物占いは妻財が用神の場合が多いですが、例えば書籍を探す場合は用神が父母となります。あるいはペットの行方を追う場合は子孫が用神となりますから、その際は兄弟爻の発動はそれぞれの用神に対する関係から判断すると異なります。

「求財を占ふ。悪客と為す。世に在りて発動せば財必ず求め難し。傍爻発動せば人と同じく求むるは則ち可なり。然らざれば善美の利無し」

金運の占いに在っては、兄弟は用神・妻財の忌神となる。

もし世爻が兄弟を帯びるような時は、金運は凶。また発動する場合は大凶で、求めても得られない。もしこの時、世爻のすぐ隣の傍爻が子孫で発動するような時は、子孫は喜神であるので吉。他の爻が発動する場合は得られたとしてもわずかである。

※(注)本文「傍爻」とありますが、傍爻に限らず兄弟が発動して子孫爻も発動するときは接続相生となります。ただし、金運占では用神・妻財の旺相だけではなく世爻との生剋合冲の関係を見ますので、世爻が「兄弟」を帯びる時は、世爻から妻財を剋す「我ゆきて物を尋ねる(我去物尋)」となるので凶です。こと、金運や求財、商売の成否を占うにおいては、妻財が月併、日併して原神の発動を見るような吉も大吉の象でなければ、吉と断じ難い…師匠及び師匠の師匠である易八大の言です。

「出行及び行人を占ふ。皆伴侶と為す。旺相せば則ち侶多し。休囚せば侶少なし。発動は宜しからず。動けば則ち盤纏を増費す」

旅行や行商、旅中の人の安否を占うに在っては、兄弟爻を同行者、同伴する人とする。旺相する兄弟であれば人数が多く、休囚であれば少ない。発動は旅中費用、出費多く路銀が不足する象である。

「家宅を占ふ。破産の神と為す。旺相権に当たりて発動すれば必ず多耗多端、収拾し難し。然らざれば勤労辛苦するも財利軽微なり」

家宅を占うに在っては、兄弟爻を破産の星とする。この爻が旺相し卦に影響を及ぼし、発動を見るような時は、必ず家屋に関わる諸費が多方面にわたって生じ、苦労に苦労を重ねても家運の衰退は免れ得ないであろう

※家屋を占う場合は用神が父母となります。この場合、兄弟が発動すると、父母から兄弟への泄氣となります。ここを以て家運の衰退と解釈しています。
家宅の購入するような妻財を用神とする占については、求財占同様に兄弟が忌神となるので、これが旺相して発動することは良くありません

「国家を占ふ。若し世上に在りて動かば、須く聚斂の臣国事を翻すを防ぐべし」

国運を占うに在っては、もし世爻が「兄弟」を帯びあるいは用輅(総理)大臣の爻(五爻)が兄弟を帯び発動を見れば、汚職、賄賂等、官職にある者公儀を怠り私欲を満たすので、国運は傾くであろう。

※(注)九鬼訳「用輅大臣」の輅は車。中国に於て「車」は高貴な身分の象徴です。易の卦における五爻は至高の尊位であるし、五爻に道路の象意があるので、ここでは五爻が「兄弟」を帯びると解釈します

「征戦を占ふ。伏兵と為す。安静にして冲に逢はば、名を暗動と為す。其の計必ず中す」

戦争を占うに在っては、兄弟を帯びる爻を敵軍の伏兵、奇策とする。若し静爻が日辰から冲を受けて暗動すれば、目に見えないところで謀が進み、相手の術中にはまるであろう。

「疾病を占ふ。兄弟朋友の用爻と為す。妻妾を占ふ剋殺と為す。旺相発動せば、妻必ず傷有り」

病氣を占うにあっては、兄弟が用神である場合は兄弟、親類、朋友の容態を占う時である。用神の旺、生剋、合冲をもって、その病氣の重軽、回復や回復の遅疑を断じる。妻の容態を占う時は、用神が妻財となるので、兄弟の発動は忌神の発動となる。兄弟爻の旺相発動は妻財を剋すので、妻の容態は危うきありと断じるのである。

※病占の場合患者の容態、健康状態を占う場合は世爻(自占、あるいは当人依頼占の場合)あるいは応爻を患者ととり、その上で病気の吉凶であれば官鬼を用神としてその旺衰と、世爻あるいは応爻に対する生剋合冲等の関係を見ます。治療、投薬であれば子孫を用神としてその旺衰と、世爻あるいは応爻に対する生剋合冲等の関係を見ます。
妻の健康状態を妻財ととるならば妻財は子孫から生を受け、官鬼に生を与えるので誤断の元となります。同様に兄弟は必ず官鬼から剋を受け子孫に生を与えますから、この関係を考慮すると、この節の判断は無用でしょう。
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  1. […] 「天玄賦総論提綱通解」現代語訳③五類の兄弟についての用法の解説ですw… […]

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