易経「繋辞上伝」を読み解く16

易経繋辞伝
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易経「繋辞上伝」を読み解く⑰

 

人に同じくするに先には號(ごう)咷(とう)して後には笑ふ。子曰く、君子の道は、或は出(い)で或は處(お)り、或は默(もく)し或は語る。二(に)人(にん)、心を同じくすれば、其利、金を斷(た)つ。心を同じくするの言は、其(その)臭(におい)、蘭の如し。(繋辞上伝第8章第4節)

 

「天火同人」の五爻の爻辞を引用しての解説です。「風沢中孚」の形を以て「大離」、またこの「天火同人」より「離」を抽出して前後の卦を併せて「離為火」ができると前回、前々回で読み解いてきましたが、この「天火同人」の五爻の陽爻(—)を陰爻(- -)に転じた之卦が「離為火」でもあります。

 

「 人に同じくするに先には號(ごう)咷(とう)して後には笑ふ 」

「志を果たそうと、他者から共感を得ようと君子は努力するが、始めは理解者も現れず、時として批判されたり、嘲笑されて辛い思いをし、時には悔し涙に暮れることもあるだろう。しかし努力を続けていれば、いつしか共感者も現れて、肩を叩きあいながら昔を振り返っては笑いあう時代が必ず来る…」

 

孔子自身も、自分の半生を振り返りながらの解説をこう続けます

「 子曰く、君子の道は、或は出(い)で或は處(お)り、或は默(もく)し或は語る。二(に)人(にん)、心を同じくすれば、其利、金を斷(た)つ。心を同じくするの言は、其(その)臭(におい)、蘭の如し。 」

君子の歩む道は、出仕して宮仕えする者、在野に在って巷間を観察する者、厳しく社会を糾弾する者、あるいは達観して沈黙を保つ者。

「天火同人」の卦を全体でとらえれば、二爻の陰爻(- -)と五爻の陽爻(—)が応じています。孔子の解説にある「或いは出で」と「或いは語る」が五爻の陽爻(—)でしょう。

一方で「或いは處り」「或いは黙し」は二爻の陰爻(- -)。お互いの地位も、立場も異なる物ではあるがそこにお互いの意見の隔たりを超え、共感一致するところを見れば、たちまちその理知の鋭さは古い形式、硬直化した制度の弊害(この句“金を断つ”と比喩する)をも断ち切る鋭さを持つようになる。

 

 

君子同士が心を通わせる…、この場合は異なる道を歩むものでもその志、目指す方向性に共通するものが有れば、たとえ生業は異なっていてもその考え方、その根本にある理念の一致を見ます。その道に志す者同士、またそれを聴く者の心底に同様の志があれば、膝を打ってそうだ、その通りと心から共感しあうでしょう。これを香しい蘭の花の芳香に孔子は例えます。

心を通わせる…、この場合は天火同人の五爻の陽爻(—)が陰爻(- -)に転じ「離為火」となる所に大智を見ます。一方で「金を断つ」としたのは、二爻の陰爻(- -)が陽爻(—)に転じると「乾為天」になり成就を意味します。乾為天は全体で五行の「金」を表すので、旧弊を改める大鉈のたとえを引いた孔子の言葉の背景には、「離為火」「乾為天」の卦徳があるのです。

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