易経「繋辞下伝」を読み解く13

易経繋辞伝
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易経「繋辞下伝」を読み解く13

上古は結縄(けつじょう)して治まる。後世の聖人これに易うるに書契(しょけい)をもってし、百官(ひゃくかん)もって治め、万民もって察(あきら)かなるは、蓋しこれを夬(かい)に取る。(繋辞下伝第2章第13節)
「上古は結縄(けつじょう)して治まる。後世の聖人これに易うるに書契(しょけい)をもってし、百官(ひゃくかん)もって治め、万民もって察(あきら)かなるは、蓋しこれを夬(かい)に取る。」

「太古の時代は、縄の結び目をもって約定の目印とした。物事が複雑ではない時代はそれで治ったが、聖人は文字や割符を作り、これを以って行政に携わる役人の職務を明快に改め、また万民にはその統治が公正であることを明快に表した。おそらくこれは“沢天夬”の卦象を参考に思いついたものであろう」

「沢天夬」は上卦は「兌(金)」、下卦も「乾(金)」で五行の金より“明快”“明理”です。一方で上卦の兌には喜び従うの意味もあり、文字の発明は情報の伝達や物事の是非を論じるに明確な基準を設けたので、統治する側も、統治される側も等しくその恩恵を受ける「説」の意味が込められています。この卦も、前の「雷天大壮」同様に「大兌」の象が取れますから、それまで曖昧であって揉める事が多かった物事が円満に収まる様子です。

また下卦は「三陽」で文章を表し、上卦兌は一陽の欠ける形から割符、あるいは「印章」を表したものでしょう。

第2章は、繋辞上伝の第8章のように、具体的な易の卦象を引用して易の発展とともに人間の文明社会の発展を解説します。

一方で繋辞上伝では文王の訳した言葉としての易経に焦点を当てたのに対し、下伝はその卦の象(かたち)に焦点を当て、様々な角度から易の卦象を読み解こうと試みています。

その根拠となるものが、今に伝わらない易の卦象や万物生々発展について伝えられた伝承があるのか、孔子の深い洞察によるものであるのか?

おそらく後者による所のものが大きいと想像します。勿論それまで口伝や民間伝承のように伝えられていた物も存在していたのでしょうが、孔子は何度も易経を読み解くうちに、そうした伝承を篩にかけ、一方で自身で不足を補い、この章を完成させたのだと想像します。

もし、論拠となる文献のようなものが既に存在したのであれば、下伝ではなく上伝にその文章を割いても良い内容であるし、易経の生成発展の理を示すのであれば、上伝の8章より先にこの章を配するべきです。

孔子がそうしなかったのは、おそらく文王の訳した易経に触れ読み進めるうちに、言外に感じる所に孔子が新たに氣づき、これを汲み、まとめ発展させたのが繋辞下伝と想像するからです。

下伝に入り、孔子の解説する所、言葉の選び方に勇躍する所を感じるのは、氣づきの連続に孔子自身も深い感銘とともに筆を躍らせていたのではないか…、そんな想像に重ねて下伝を読み解いています。

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