易経「繋辞上伝」を読み解く21

易経繋辞伝
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易経「繋辞上伝」を読み解く 第8章第6節乾為天上爻「亢龍悔い有り」に、孔子は自身の死後、弟子たちが辿ってしまう悲劇を予見していたのかもいしれません。

易経「繋辞上伝」を読み解く21

戸(こ)庭(てい)を出(い)でず。咎无し。子曰く、亂の生ずる所は、則ち言語以て階と爲す。君(きみ)、密ならざれば則ち臣を失ふ。臣、密ならざれば則ち身を失ふ。機(き)事(じ)、密ならざれば則ち害成る。是(ここ)を以て君子は愼(しん)密(みつ)にして出(いだ)さざる也。(繋辞上伝第8章第10節)

前節、「亢龍悔い有り」とは別の道を孔子は指し示します。

自らの教えである儒教の行く末を予見したかのごとき「亢=坑」の孔子の警句ですが、ここで「水沢節」を用いるその真意を踏まえつつ読み解いてきたいと思います。

孔子の引用する水沢節の爻辞は初爻です。

初爻の位置は、二爻から上爻の互體で構成される「水火既済」から唯一外れた爻となります。

完成の卦である水火既済から距離を置き、言うなればその完成を俯瞰あるいは達観して眺める形にも見えます。

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易経64卦はこの63番目の「水火既済」の直後に「火水未済」という未完成の卦を置き、「完成の時は長続きせずそれはすぐに終焉し、次の生成化育のサイクルが始まる」という含みを持たせて、書物としての易経は完結します。

ただし意義的にはそこから最初の乾為天に戻り、再び新たな循環のサイクルが始まります。

「 戸(こ)庭(てい)を出(い)でず。咎无し。 」

「亢龍悔い有り」の乾為天の破滅的な成就ではなく、「水沢節」の中に見出す「水火既済」は、いかなる物事も永続するということは叶わない。いずれは時代、時代において変わらざるを得ない。

その自らの思想である儒教においても、破綻、破滅という劇的なあるいは外的要因による変化よりも、それを信奉する弟子たちによる氣付きであったり、自己変革を促す時間的猶予といった意味での「節度」を、孔子はこの水沢節初爻の引用を以て弟子たちに促したのではないでしょうか?

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この爻辞を以て孔子は「君子はその言葉を慎む」と解説し、その考えは同じく孔子が著した「大学にある“君子は独りを慎む”に集約されていきます。

「風沢中孚」で指摘した「言行一致」を貫くことが君子の王道であり、そこから逸脱した時に苦難、苦境、そして果てに破滅の危機があると孔子は戒めます。

その上で、行動より先に「言語」がある。わが国には「言霊」という言葉が今に伝わっていますが、これは「想念と発声」という法華経の教えでもあります。もっと俗な言い方をすれば「引き寄せの法則」であり、発する言葉は現実を引き寄せてしまう。

格物・致知・誠意・正心・修身・斉家・治国・平天下(大学)
思考に気をつけなさい。それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい。それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい。それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい。それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい。それはいつか運命になるから。(マザー・テレサ)

マザー・テレサの格言も「大学」の“格物致知”に通じるところがあり、まず心があり、その心に根差した発言があり、その発言が行動を型作るとあります。

これらは全て「思考」「言動」がその人の「行動」を生み、その結果、その行動がその人の「運命」をも決めてしまうという名著『思考は現実化する』を著したナポレオン・ヒルの思想につな繋がっていきます。

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繋辞上伝で孔子はこれを逆説的に解説します。

「 子曰く、亂の生ずる所は、則ち言語以て階と爲す。君(きみ)、密ならざれば則ち臣を失ふ。臣、密ならざれば則ち身を失ふ。機(き)事(じ)、密ならざれば則ち害成る。 」

「国の乱れは君主の言葉の乱れに端を発し、君主の言葉の乱れが人臣の乱れとなり、人臣の言葉の乱れが国民の乱れとなり、国民の言葉の乱れが一個人の乱れに通じる。」

この孔子の「言語」の前提にはその「心=意」があり、一方で言語の後には結果としての「行い」があるのです。

「 是(ここ)を以て君子は愼(しん)密(みつ)にして出(いだ)さざる也。 」

その故に孔子は「君子は独りを慎む」という「節度」を君子を志す者に求めています…

第八章の一連の孔子の爻辞の引用は、弟子からの質問に対する孔子の思い付きの引用ではなく、易経の摂理の通じた孔子の、その深い洞察より導き出された奥深い引用です。

そこに充てられた辞以上に、その前後孔子を含め儒教が辿った道筋に当てはめて考察すると、易経の底知れない奥深さを改めて感じることができます。

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易経「繋辞上伝」を読み解く22
易経「繋辞上伝」を読み解く第8章第11節君子道に終わりは無い。これを「雷水解」に卦を以て孔子は説き示します。
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